仕事の帰り道


毎日、忙しく、くたくたになって夜の11時〜1時ぐらいに地元の駅に着く。駅から家に向かう道には人気がない。あたりはしんとしてる。

道すがら、いつもこの時間に犬の散歩をしてる若い女の子がいる。
何という種類の犬かわからないけど、ちゃんと血統書がついた賢そうな犬。白くて気持ちよさそうな毛並みは誰が見てもさわってみたくなる。女の子の服装はいつも同じで、軽くてひらひらした薄い生地のワンピース。夜は涼しいので少し寒そうに両腕を組んでいる。年齢は20歳前後だろうか。このところは毎晩、道ですれちがうので、向こうもぼくの顔を覚えてるのだろう、お互いに軽く会釈するようになっていた。

「毎日、お仕事大変ですね」

一瞬、誰に言っている言葉かわからなかった。

会釈した後、通り過ぎようとした直後だったし。ん?どうも俺に行ってるらしいと思った瞬間、振り返ると、ぼくの顔が相当驚いた様子だったらしく、女の子がぼくをみてクスクスと口に手をあてて笑ってた。

ぼくは2,3秒の間、固まったままだった。

「えぇ、仕事が忙しくて」

と、なんとか返答してみたが、声がちょっと裏返ってしまった。これはいかんと思い、気をとりなおし、

「そちらもいつもこんな時間に犬の散歩ですか」

「はい、この時間以外だと他の犬がいるから嫌なんです。
 ワタシ、他の飼い主同士で仲良くするの苦手で」

とてもすてきな感じで笑う子だなと思った。それによくみると肌がすごく白い。

「その犬かわいいですね。なんていう種類なんですか」

「○○○て言うんです。もともと北欧あたりにいる犬の種類なんですよ。」

「へぇー」

聞いたこともない犬の種類に生返事;;なんか、やばいぞ俺。

「さ、さわってみていいですか。犬」

「えぇ、どうぞ。すーっごい気持ちいいですよ。」

さわってみる。うむ、これはたしかに気持ちいい、毛布をさわってるみたい。
「毛布みたいですね。」

「ウフフ、みんなそーいうんです。絶対に。」

しばらく。俺、犬をなでなで。

「ど、どうもありがとう。 とても気持ちよかったです。(やばい、なんか変な言い方かな?)仕事の疲れがふっとんだ感じです。(この言い方普通だよな?)」

「じゃあ、ワタシいつもこの時間に散歩してるので、疲れたときはいつでもメイドリアン(この犬の名前らしい)に触ってください。ワタシもいつもメイドリアンに癒されてるんですよ。では、もう今日は遅いから、おやすみなさい」

「うん。おやすみなさい」










どわぁぁぁ!!いかん!いかん!
ついつい、こんな妄想をしてしまった!!
こんなことねーかな!
ねーだろーなぁ!ぜってーねーだろーなぁ!
あかん、完全にノイローゼですわ!!